どうも、マスクがもったいなくて塗装が進まないapyaponです。
今回の『いまさらおすすめモデルグラフィックス』は、PGガンダム&ザクⅡの作例を通じて宇宙世紀の科学を考察する&プラモ狂四郎を例にガンダム20周年を振り返る1冊、モデルグラフィックス 1999年7月号を紹介します。
2019年に40周年を迎えた『ガンダム』というコンテンツ。20周年(SEED以前)の時点で、モデルグラフィックスは『ガンダム』をどのように捉えていたのか?今読むからこそ面白い一面もありますよ。
ガンダム テクノロジー0079
「ガンダムという作品が広がった理由は、SFというフィルターで知的に探究し、バックボーンを構築したから」とする本誌。しかし、20年の間でSFというフィルターが忘れられていると仮定し、1999年時点でのSF的ガジェットに裏打ちされたリアルな設定を考察していきます。
教育型コンピュータ
MSにおけるオペレーティングシステムとは。
ガンダムの性能の高さは、教育型コンピュータの力によるところが大きい。そこで宇宙世紀0079時点でMSのOSほどうなっているのか?という考察が語られます。「旧暦における20世紀末、研究が停滞していた人工知能の開発は、宇宙世紀70年代に入ってもあらたな進展をみせることなく…」とスタートしますが、2020年現在は人工知能が身近な存在になっていますね。
ジオンはMSごとに大きく異なる形状、開発メーカーの差もありOSのメンテやアップデートが困難。一方で連邦は…という視点で考えると、ジオンは物量に敗れたと語られることが多いが、システム制御の優位差も存在そいていたのでは?と語られます。
上図は『ガンダムの教育型コンピュータ(OS)の起動画面』のイメージ。劇場版『パトレイバー』を参考にデザインしているのも、ワクワクするポイントです。BABEL BABEL BABEL BABEL……若い子には伝わらないかもしれませんね。
流体パルスシステムとフィールドモーター
巨大人型を支える駆動系。
ザクやグフの動力パイプの中には何があるのか。そんなこと考えたことありますか?中にはZIONIC社が開発した「流体パルスシステム」のチューブが入っており、ジェネレータで発生したエネルギーをパルス・コンバーターで……という感じに、駆動系について語られる本項。
MS開発で後発の連邦は「流体パルスシステム」ではなく「フィールドモーター」を採用し……と、ジオンと連邦の違いに関する考察が続きます。ちなみにギャンは「フィールドモーター」、ゲルググは「流体パルスシステム」を採用しており、最終的にMSの駆動システムはすべて〇〇へ移行した……というお話。
その後も…
核融合炉 ミノフスキー粒子が生み出した”心臓”やモノコックとセミモノコック 兵器としての強度と運用性の二律二律背反をテーマに考察が進みます。
そうそう!ザクはモノコックで、ガンダムはセミモノコック!後のムーバブルフレームを含め、昨今のMG(マスターグレード)ではどういった扱いなんだろう?と思いながら読むのもまた一興。
続いて「現代工学の延長線上に、ガンダムのようなMSは実現できるのだろうか?」という切り口で、1996年に発表されたホンダのヒューマノイドを例に巨大ロボットを語ります。2020年の夏に公開される横浜の「歩く実物大ガンダム」への期待も高まりますよね。
制作記&バンダイ モビルスーツ開発史
考察のあとは模型誌らしくPGガンダムとザクⅡの作例解説。ガンダムは伊藤霊一氏によるもの。
ザクⅡは高橋信仁氏。シールドにウェポンラックを新造しているものの「ここから右腕でどうやって武器を取りはずすかは謎」という正直さが好きです。
なぜこの号を取り上げたのか?
ここまでほぼ読み物を紹介してきた今回。後半も読み物の紹介です。当時はガンダム20周年の1999年。モデルグラフィックス 1999年7月号は冒頭に「ガンダムの世界から設定が失われて久しい」と書かれていました。
ファーストガンダム直撃世代は、現実世界とアニメーション世界との整合を取るようなSF的な設定に惹かれたのではないでしょうか?僕は1984年生まれの後追い世代ですが『MSV』や近年再販された『ガンダムセンチュリー』に触れながら、機動戦士ガンダム本編で描かれていない、なんかリアルな設定を読み「もしも自分が宇宙世紀0079にいたら…」と、考えながらガンダム/ガンプラに触れるのが楽しくて仕方がありません。
しかし、読んでガンダムの世界観に没頭できる記事って、いつからかなくなってしまった気がするんですよね……。それが悲しいのと、20周年の際にガンダム/ガンプラの未来を予想した内容が今でも面白いので取り上げました。
そして後半戦
『プラモ狂四郎』を古いと言うあんたが古いぜ。
1999年の時点でガンダムファンの「ガンダム像」はバラバラであると書かれています(ちなみに当時の最新ガンダムは∀ガンダム)。しかし、1989年ごろにはガンダムに対して特定/不特定多数が共感できる価値観の最大公約数、ガンダムに対する「正解」があったのだそう。その代表例が『ガンダムセンチュリー』。
子供向けのロボットアニメにSF的近未来設定を盛り込むことで、大人の鑑賞にも耐えうる作品としてのおもしろさがあったとしています。ちなみに『ガンダムセンチュリー』は樹想社のHPで新装版を購入できるので、気になる方はぜひ!
さて、価値観の乱立により、ガンダムというコンテンツに対する「正解」が各々の中に存在するようになった1999年。もはや制作者側がどんなものを提示しようと、個人が満足するガンダムはありえない、そしてガンダムは崩壊していく……と予想しています。
2020年現在の目で見ていかがでしょうか?ガンプラアニメの『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』や古参向けの『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』、富野ファンには『Gのレコンギスタ』を展開。ポジティブに捉えると、多様性があるのかなと。その分、1つの作品では商売がしにくくなっているのかもしれませんね。
ガンプラについては、次のような視点で書かれています。
ここではガンプラモデラーを「模型を作るという行為が好きなのではなく、ガンプラを作る行為だけが好きな人たち(ガンプラ以外のプラモデルを知らない)」と定義。最大の弊害が模型工作スキルの急速な低下&イマジネーションが生み出せないこととしています。
AFVや航空機、SF、スケールモデル……ガンダム/ガンプラ以外の知識もあれば「MSが存在したら」というイマジネーションを膨らませ、実物として納得感のある演出を施せるということ。『プラモ狂四郎』を読んだ方は「劇中で四郎が指摘されていたことと同じだ」と、思ったのでは?
そんな『プラモ狂四郎』を振り返る過程で触れていたのが、後半に作風が変わり模型道的なリアリティーな描写が影を潜めていくこと。ガンプラアニメの『ガンダムビルドファイターズ』も『ガンダムビルドファイターズトライ』になり、模型作りの描写が減った気がします。その後の『ガンダムビルドダイバーズ』はガンプラではなく、オンラインゲーム寄り=自分が求めるガンダム/ガンプラアニメではないのかな?と思い観ていません。
これもガンダムというコンテンツに対する「正解」が各々の中に存在するようになった結果なのだと感じています。
そして1999年の∀ガンダム。「かのシド・ミード画稿発表から多くのファンが拒絶した(中略)なかには「肯定できちゃうオレってば大人!」的優越感によるものも見受けられ、どちらにせよずいぶんと安っぽい価値観が乱立している。」と書かれており、自身も心当たりがあるので笑ってしまいました。
まとめ
記事では、狂四郎はガンプラ以外のことからも学んだからこそ、数々のライバルに勝てた。中には矛盾だらけの意見を聞き、それを理解しようと努力した。そんな姿勢がモデラーとして成長の糧になるのでは?という形で絞めています。
個人的にはガンプラしか作らないガンプラモデラーを否定する気はありません。ただガンダム/ガンプラに対する価値観の乱立については、特にTwitterを見ていて感じます。1999年にガンダムの崩壊を予想していたモデルグラフィックス 1999年7月号。2020年現在も『ガンダム』というコンテンツは存在していますが、今後どうなっていくのでしょうか……。
ということで、いつもより文字数多めでお届けしましたが、これでも削りに削って表現しました。40周年を迎えた今、みなさんの目にガンダム/ガンプラはどのように映っているのでしょう?20周年時の考察が気になった方は、オークション等で手に取っていただきたいと思います。
以上、モデルグラフィックス 1999年7月号の紹介でした。